この記事の結論
- 特別養護老人ホーム(特養)の入所は、申し込んだ順番ではありません。介護の必要性の高さを点数化し、必要度の高い方から順に決まります。
- 全国の入所申込者は、要介護3以上で20.6万人(2025年4月1日時点)。3年前の25.3万人から18.4%減っています。
- 埼玉県は、要介護3以上の認定を受けた方のうち特養に申し込んでいる方の割合が5.2%。全国平均の8.6%を下回り、全国でも低い水準です。
「何年待ちですか」という問いに、全国共通の答えはありません。ただし、順番がどう決まるのかという仕組みは公開されています。仕組みを知ることは、いま何をすべきかを決める手がかりになります。
1. 「特養の待機」とは何を指すのか
特別養護老人ホームは、介護保険法にもとづく公的な入所施設です。原則として要介護3以上の方が対象と定められています。
ここでいう「待機している人」とは、厚生労働省の調査では入所申込者、つまり「特養に申し込んでいるが、まだその特養に入所していない人」を指します。
厚生労働省が2025年12月25日に公表した調査(2025年4月1日時点)では、次のようになっています。
| 区分 | 2025年(今回) | 2022年(前回) | 増減 |
|---|---|---|---|
| 要介護3以上の入所申込者 | 20.6万人 | 25.3万人 | ▲18.4% |
| うち在宅で暮らしている方 | 8.6万人 | 10.6万人 | ▲18.5% |
| 要介護1・2(特例入所の対象) | 1.8万人 | 2.2万人 | ▲17.9% |
出典:厚生労働省「特別養護老人ホームの入所申込者の状況(令和7年度)」(2025年12月25日公表)
「20万人待ち」という数字の正しい読み方
この数字を見ると、途方もない行列に並ぶような印象を受けるかもしれません。しかし厚生労働省は、この調査結果に次のような注記を付けています。
長期間にわたり各施設の申込者名簿に登載されている方も含まれておりますが、入所を希望する時期や条件、生活環境の変化等の様々な事情により、必ずしも現に入所を必要としている場合に限らない点に留意する必要があります
つまり、「将来のために念のため申し込んでおいた」という方も同じ人数の中に含まれています。20.6万人全員が、今すぐ入所を必要としているわけではありません。
また、申込者の約58%は、すでに病院や他の施設で暮らしている方です(在宅の方は9.5万人/全体22.5万人)。在宅で介護をしながら順番を待っている方は、数字の全体像よりも少ないことになります。
2. 埼玉県の状況は、全国平均より申込が少ない
同じ調査には、都道府県ごとの数字も掲載されています。要介護3以上の認定を受けた方のうち、どれだけの人が特養に申し込んでいるかという割合です。
| 区分 | 2022年度 | 2025年度 | 変化 |
|---|---|---|---|
| 全国平均 | 10.6% | 8.6% | ▲2.1ポイント |
| 埼玉県 | 6.3% | 5.2% | ▲1.2ポイント |
埼玉県の5.2%という数値は、全国平均の8.6%を下回っています。全国で見ても低いほうの水準です。
これは「埼玉なら誰でもすぐ入れる」という意味ではありません。市や施設によって状況はまったく異なりますし、そもそもこの数字は待機期間の長さを示すものではないからです。
ただし少なくとも、**「埼玉県は、要介護3以上の方に対して特養への申込が集中しにくい地域である」**とは、公的データから言えます。全国ニュースで見る「数百人待ち」の数字をそのまま自分の地域に当てはめて諦める必要はない、ということです。
3. 順番は「申し込んだ順」ではない
ここが、この記事でいちばんお伝えしたい点です。
特養の入所は、先着順ではありません。国の指針にもとづき、各都道府県が「優先入所指針」を定め、介護の必要性が高い方から順に入所できる仕組みになっています。
埼玉県の場合、埼玉県特別養護老人ホーム優先入所指針と、その別表である「優先順位の評価基準」が県のサイトで公開されています。施設はこの評価基準にもとづいて申込者の状況を点数化し、合計点の高い順に順位をつけます。
最終的な順位は、各施設に設けられた入所検討委員会の合議で決まります。施設長・生活相談員・介護職員・看護職員・介護支援専門員などが出席する会議です。
つまり、こういうことです
- 1年前に申し込んだ人より、昨日申し込んだ人のほうが先に入所することがあります。
- 状況が変われば(介護者が倒れた、認知症の症状が進んだなど)、順位も変わります。
- 順位は一度決まったら固定ではなく、定期的に見直されます。
「もう申し込んだから、あとは待つだけ」ではありません。状況が変わったら、そのつど施設に伝えることが順位に影響します。
4. 順番を左右する4つの要素
評価基準の項目は自治体によって差がありますが、共通しておおむね次の4点が見られます。
(1)要介護度 要介護5に近いほど点数が高くなるのが一般的です。特養は原則として要介護3以上が対象です。
(2)認知症の症状の程度 日常生活に支障をきたす症状や行動が多いほど、点数が高くなる設計になっています。
(3)介護をする家族の状況 ひとり暮らしである、同居家族が高齢・病気である、仕事があって日中は介護できない、といった事情が評価されます。**「介護する人がいるかどうか」ではなく「介護を続けられる状態かどうか」**が見られます。
(4)在宅サービスの利用状況・住まいの環境 すでに在宅サービスを限度いっぱいまで使っている、住宅の構造上どうしても介護が難しい、といった事情です。
なお、虐待や介護放棄など、生命・身体に危険がある場合は、点数に関わらず優先して入所を検討する取り扱いが定められています。
要介護1・2でも申し込める「特例入所」
原則は要介護3以上ですが、要介護1・2の方でも、やむを得ない事情で在宅生活が著しく困難と認められる場合は「特例入所」の対象になります。認知症の症状が重い、知的障害・精神障害を伴う、家族による虐待が疑われる、単身または家族の支援を受けられない、といったケースです。
この場合は市町村が関与して判断します。全国で1.8万人が特例入所の対象として申し込んでいます。要介護1・2だから対象外だ、と自己判断で諦めないでください。
5. 申込書の「特記事項」が、いちばん見落とされている
評価基準は点数表ですが、申込書には点数表の項目に収まらない事情を書く欄(特記事項・その他の欄)があります。ここに書かれた内容が、委員会での判断材料になります。
以下は、書き漏らされやすいけれど、伝える価値のある情報です。ご家族で申込書を書くときの確認にお使いください。
□ 介護している人の健康状態 「腰を痛めて持ち上げられない」「自分も通院している」など、具体的に。
□ 夜間の状況 夜中に何回起きるか、その対応を誰がしているか。日中の様子だけでは伝わりません。
□ 仕事との両立の状況 時短勤務にしている、遅刻・早退が続いている、離職を検討している、など。
□ 在宅サービスをどこまで使っているか 支給限度額に対してどれくらい使っているか。上限まで使ってなお足りない、という事実は重要です。
□ 過去の事故・ヒヤリハット 転倒、火の消し忘れ、外に出て戻れなくなった、など。日付とともに。
□ 住まいの構造上の問題 2階に居室がある、段差が多い、浴室が狭いなど、改修では解決しない事情。
□ 状況が変わったら、そのつど施設に連絡する 申し込んだ後の変化は、施設に伝えなければ順位に反映されません。
この作業は、担当のケアマネジャーと一緒に行うと確実です。日々の記録を持っているのはケアマネジャーだからです。
6. 待っている間にできること
順番を待つ数か月から数年のあいだ、在宅の介護は止まってくれません。ここが、多くのご家族にとっていちばん苦しい期間です。
待機中の選択肢には、次のようなものがあります。
複数の特養に申し込む 特養の申込は、複数の施設に同時に出すことができます。1施設だけに絞る理由はありません。施設ごとに入所検討委員会が開かれ、順位も別々につくためです。
ショートステイを使う 短期間の宿泊サービスです。介護をする家族が休むためにも使えます。申込先の特養がショートステイも運営している場合、施設と関係ができるという副次的な効果もあります。
老健(介護老人保健施設)を検討する 在宅復帰を目的としたリハビリ機能をもつ施設です。特養とは制度上の性格が異なり、入所期間の考え方も違います。 → 埼玉県の介護老人保健施設を探す
介護付き有料老人ホーム・グループホームを検討する 民間の施設です。費用は特養より高くなる傾向がありますが、空室があれば比較的早く入居できる場合があります。認知症の症状がある方はグループホームも選択肢になります。 → 施設の種類から探す
地域包括支援センターに相談する 市区町村が設置する公的な相談窓口です。無料で相談できます。介護保険サービスの調整、家族の負担の相談、施設情報の提供などを行っています。まだ担当のケアマネジャーがいない場合は、まずここが窓口になります。
費用の負担軽減制度を確認する 特養には所得に応じた負担軽減の仕組みがあります。 → 特別養護老人ホームの費用と負担軽減のしくみ
7. 当サイトが持っていない情報について(正直にお伝えします)
老人ホームカルテは、厚生労働省が公開している「介護サービス情報公表システム」のデータをもとにしています。そのため、各施設の空室状況・待機人数・現在の待機期間は、当サイトでは持っていません。
これらは日々変わる情報であり、公開データには含まれていないためです。当サイトに掲載できるのは、施設の種別・所在地・定員・運営法人といった、公的に確認できる事実に限られます。
したがって、「この施設なら今すぐ入れます」といったことを、当サイトからお伝えすることはできません。空室や受け入れ状況の確認は、各施設へ直接、または複数の施設をまとめて確認できる紹介サービスをご利用ください。
8. 埼玉県・川口市で特養を探す
当サイトでは、埼玉県内72市区町村・1,617件の介護施設を、厚生労働省の公開データにもとづいて掲載しています。施設ごとのページでは、定員が県内の同じ種別のなかでどのくらいの規模にあたるかを、公的データから機械的に算出して掲載しています。
→ 川口市の特別養護老人ホームを見る → 埼玉県の市区町村から探す → 特別養護老人ホームとは(種別の解説)
掲載順は、広告の有無によって変わることはありません。評価点・利用者の書き込み・順位付けは掲載していません。公開データにない情報は書かない、という方針で運営しています。
9. よくある質問
Q. 特養の待機期間は平均で何年ですか。 A. 全国共通の平均値は公表されていません。順番は申込順ではなく、介護の必要性の高さで決まるため、同じ施設でも人によって待機期間は大きく異なります。「平均◯年」という数字を掲げているサイトがあれば、その根拠をご確認ください。
Q. たくさんの施設に申し込むと、印象が悪くなりませんか。 A. 複数申込は制度上認められています。厚生労働省の調査でも、重複申込を排除して実数に近づける集計が行われており、複数申込が前提となっていることがわかります。
Q. 申し込んでから、こちらから連絡してもよいのでしょうか。 A. 状況が変わった場合(介護者の体調悪化、症状の進行など)は、施設に伝えてください。順位は定期的に見直されるため、伝えなければ最新の状況が反映されません。
Q. 要介護2ですが、申し込めますか。 A. 特例入所の要件に該当する場合は申し込めます。判断には市町村が関与します。まずは担当のケアマネジャーか地域包括支援センターにご相談ください。
Q. 入院中でも申し込めますか。 A. 申し込めます。厚生労働省の調査でも、申込者の半数以上は在宅ではなく、病院や他の施設で暮らしている方です。ただし、医療的な処置が必要な状態の場合は、施設側で受け入れの可否を判断することになります。
出典
- 厚生労働省「特別養護老人ホームの入所申込者の状況(令和7年度)」2025年12月25日公表(2025年4月1日時点の集計)
- 埼玉県「埼玉県特別養護老人ホーム優先入所指針」および「優先順位の評価基準(別表)」
- 厚生労働省「指定介護老人福祉施設等の入所に関する指針について」
- 施設情報:厚生労働省「介護サービス情報公表システム」(データ基準日:2025年12月末時点)
免責
当サイトは、公的データにもとづく情報の整理を行うものであり、医療・介護の専門的な助言は行いません。入所の可否・優先順位の判断は各施設の入所検討委員会および市町村が行います。具体的なご相談は、担当のケアマネジャー、地域包括支援センター、またはお住まいの市区町村の介護保険担当窓口へお願いいたします。
最終更新:2026年7月14日